すばる望遠鏡に搭載された強力な系外惑星観測装置により、今まさに生まれつつある、木星のような巨大な原始惑星が存在する証拠が初めて発見されました。ぎょしゃ座AB星という、年齢約200万年の若い星の周りで見つかった本惑星は、ガスや塵が降り積もりつつある「原始惑星」の最初の撮像例と見なされ、惑星形成理論に重要な示唆を与えています。

図1:すばる望遠鏡によるぎょしゃ座AB星(AB Aur)の赤外線画像。超補償光学系SCExAOと撮像分光器CHARISで取得されました。すばる望遠鏡などの観測でこれまで知られていた渦巻腕構造を伴った原始惑星系円盤と共に、今回新たに発見された原始惑星がはっきりと見えています。★印の位置にある明るい恒星(主星)は観測装置によって隠されています。中心の楕円(黄色の破線)は太陽系の海王星の軌道(地球-太陽間距離の約30倍)を表しています。(クレジット:T. Currie/Subaru Telescope)

太陽系の8個の惑星に対し、太陽系を超えた遠方にある惑星(系外惑星)は、1995年の最初の発見以降、約5000個も見つかっています。太陽系の惑星とは大きく違った性質を持った系外惑星はどのようにして生まれ、どのように進化し、あるものは地球のような生命を宿す惑星になれるのでしょうか? この謎を解明するためには、惑星が生まれる現場で、今まさに生まれている惑星をとらえることが不可欠です。しかし、観測的な困難さから、年齢が100万年程度の若い惑星の観測は極めて限られていました。

惑星が、若い恒星(主星)のまわりに見られる円盤状の構造、つまり、原始惑星系円盤で生まれることは1980年代から知られていました。2010年代のすばる望遠鏡の観測や、最近のアルマ望遠鏡の観測から、原始惑星系円盤のギャップ(隙間)や渦巻腕などの構造が多数発見され、それらは円盤の中で惑星が生まれている間接的な証拠と考えられています。しかしながら、円盤から生まれたばかりの惑星は、これまで一例しか画像としてとらえられていません。その若い惑星をもつPDS70は年齢が約400万年の若い星です。しかし、その「若い惑星」PDS70bは、原始惑星系円盤の「ギャップの中」に位置しており、そのまわりから物質が落ち込んでいるとしても限定的です。つまり、PDS70bは、形成の最終段階にある、進化の進んだ惑星と考えられます(注1)。

今回、ハワイ観測所、NASA、東京大学、アストロバイオロジーセンターらの国際研究チームは、すばる望遠鏡に搭載された超補償光学系(注2)を用いた観測により、「ぎょしゃ座AB星」(AB Aur)の原始惑星系円盤に埋もれた、大量の物質が降り積もりつつある「原始惑星」を世界で初めて撮像により発見することに成功しました(図1)。この天体の存在は、ハッブル宇宙望遠鏡の赤外線カメラを用いた追観測でも確認されました。

「すばる望遠鏡の超補償光学系の優れた能力によって、原始惑星と円盤を明確に区別することができました」と、装置責任者のオリビエ・ギュヨン博士は語っています。

一般に、円盤に埋もれた惑星と円盤の小さな構造を区別することは困難です。しかし、円盤からの光は反射によって偏り(偏光)が生じるため、偏光観測により、主星からの光を反射して光る円盤と、自身で光を放つ惑星を区別することができます。そこで、すばる望遠鏡の超補償光学系による偏光観測を行ったところ、発見された天体が円盤中の微細構造ではないことが確認できました。また、同じ超補償光学系に搭載された可視光装置により、この惑星に多量の水素ガスが落ち込んでいることが示されました。

主星の年齢が約200万年と非常に若く、惑星のまわりにはまだ多量の物質が見られるため、この惑星、AB Aur bは、今まさに生まれつつある惑星、いわゆる「原始惑星」の最初の例と考えられます。同時に、すばる望遠鏡やアルマ望遠鏡でこれまでに発見された、AB Aurを取り巻く原始惑星系円盤のギャップや渦巻腕などの構造の原因が、惑星による円盤への影響であることを実証したことになります(注3)。

AB Aur bは、木星の約4倍の質量(注4)をもち、主星から地球-太陽間距離の93倍も離れた軌道を公転しています。このことから、「AB Aur bは、太陽系の木星型惑星とは異なる惑星系形成モデルの証拠となります」と、本研究の主著者のセイン・キュリー博士は語ります。

太陽系の惑星の形成は、いわゆる標準的な惑星系形成モデルで上手く説明できます。これは、若い星のまわりの原始惑星系円盤で微惑星が成長し、それがさらに多量の物質を集めて木星や土星のような巨大惑星が形成されるというモデルです。形成後にこれらの惑星が主星の近くや遠くに移動したり、散乱したりする可能性も示唆されています。しかし、今回の発見は、惑星移動が起こる間もない時期に、主星から遠く離れた位置で巨大な原始惑星が誕生したことを示しています。このような遠方の巨大原始惑星の形成は、標準モデルや惑星移動・散乱モデルでは説明できません。むしろ、円盤中で自己重力により巨大惑星が形成されるという「重力不安定による惑星系形成」の確たる例と考えられます。

「ぎょしゃ座AB星とすばる望遠鏡との付き合いは長きにわたります。すばる望遠鏡は2004年にこの星を取り囲む渦巻状円盤を発見し、2011年にはギャップやリングといった円盤の構造も発見しました。ただ、いずれも惑星自体は検出できませんでした。今回、長らくの夢であった、円盤に埋もれている原始惑星の発見に遂に成功したのです」と共同研究者の田村元秀教授(東京大学)は振り返ります。

すばる望遠鏡はハワイのマウナケア山頂域にあり、そこは天文学にとって最高の場所であるだけでなく、ハワイ先住民にとって重要な土地でもあります。

「マウナケアは太陽系を超えた世界を見るための地球上で最高の場所です。このような場所で宇宙を研究できることに私たちは深く感謝しています」とキュリー博士は述べています。

本研究成果は、英国の科学誌『ネイチャー・アストロノミー』に2022年4月4日付で掲載されます(Currie et al. "Images of embedded Jovian planet formation at a wide separation around AB Aurigae", DOI:0.1038/s41550-022-01634-x)。

(注1)この惑星系では、別の惑星候補PDS70cの存在も指摘されていますが、水素輝線でしか見えておらず、惑星自体からの直接の光は見えていないと考えられています。他の惑星系の若い惑星候補もありますが、惑星と円盤の一部との区別が難しく、確実に惑星といえるものはまだ見つかっていません。

(注2)地上の望遠鏡は、地球大気の影響であたかも水中から外の景色を見るように天体の像がピンボケで揺らいで見えます。超補償光学系は、地球大気による天体像の乱れを極限的にリアルタイムで補正し、すばる望遠鏡をあたかも宇宙に置いたような、綺麗な天体像を実現します。検出器としては、CHARISという撮像分光器とVAMPIRESという可視光偏光装置を用いました。

(注3)すばる望遠鏡による、AB Aurのまわりを取り巻く複雑な構造を持った原始惑星系円盤の詳細観測については、2011年2月17日のハワイ観測所プレスリリースをご覧ください。

(注4)誤差を考慮すると木星の約4倍〜9倍程度になります。

すばる望遠鏡について

すばる望遠鏡は自然科学研究機構国立天文台が運用する大型光学赤外線望遠鏡で、文部科学省・大規模学術フロンティア促進事業の支援を受けています。すばる望遠鏡が設置されているマウナケアは、貴重な自然環境であるとともにハワイの文化・歴史において大切な場所であり、私たちはマウナケアから宇宙を探究する機会を得られていることに深く感謝します。

関連リンク

国立天文台 2022年4月5日 プレスリリース

ハワイ観測所 2022年4月5日 プレスリリース

東京大学 2022年4月5日 プレスリリース

世界で最も鮮明な惑星誕生現場の画像 ~巨大惑星が描く円盤の模様を写す~ (2011年2月17日 ハワイ観測所 観測成果)

すばるが写し出した、うずまき状の惑星誕生現場 (2004年4月18日 ハワイ観測所 観測成果)