すばる望遠などを用いた多波長観測により、若い星系に飛来した天体が原始惑星系円盤を乱す様子が明らかにされました。星系への「侵入者」が原始惑星系円盤に作用する様子を包括的に調べた観測は本研究が初めてです。私たちの太陽系の歴史にも重要な示唆を与える成果です。

図1:すばる望遠鏡、カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡 (VLA)、アルマ望遠鏡による合成画像(左)とそれぞれの波長で捉えた画像(右)。 (クレジット: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), S. Dagnello (NRAO/AUI/NSF), NAOJ)

この天体飛来現象は、地球から約3700光年先の若い連星系「おおいぬ座Z星」(Z CMa)で発見されました(図1)。すばる望遠鏡などによる赤外線の観測では、連星系を取り囲む原始惑星系円盤とその中で細長く伸びた尾のような構造が観測されています(ハワイ観測所 2016年観測成果)。アルマ望遠鏡により、この「尾」の先、連星からは約5000天文単位(太陽-地球間距離の5000倍)の位置に、新たな天体が発見されました。

天体同士の遭遇が起こると、円盤の形態に渦や歪み、隙間など、フライバイの痕跡といえるような変化が起こります。今回、科学者たちは Z CMaの円盤を注意深く観察することで、フライバイによる複数の痕跡を特定しました。

これらの痕跡は、天体飛来を検証するのに役立っただけでなく、その「訪問」が Z CMaとその星系で生まれる惑星の未来に何を意味するかを考えるきっかけにもなりました。フライバイ現象は、Z CMaの周りに長い「尾」が作られたように、惑星誕生のゆりかごである原始惑星系円盤を劇的に変化させることができるのです。さらに中心星への影響も考えられます。Z CMaでは円盤から突発的にガスが降り積もることによる中心星の爆発的な増光現象が知られていますが、これは飛来天体が円盤を乱したことにより促進されているのかもしれません。結果として、星系全体の発達にもまだ観測されていないような影響を与える可能性があります。

図2:原始惑星系円盤の「尾」を引きながら Z CMa を去る天体の想像図。この「訪問」は、この星系における惑星の成長と発達に、まだ観測されていない未知の影響を与えるかもしれません。(クレジット: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), B. Saxton (NRAO/AUI/NSF))

本研究を率いたRuobing Dong 博士(ビクトリア大学)は、銀河系全体の若い星系の進化と成長を研究することは、私たちの太陽系の起源をより理解するためにも役立つと指摘します。「このような事象を研究することで、私たちの太陽系がどのように発展してきたのか、過去の歴史を知ることができます。新しく形成された星系でこのような現象が起こるのを見ることで、「ああ、これは私たちの太陽系でずっと昔に起こったことかもしれない」と言うのに必要な情報を得ることができるのです」

「Z CMaは不思議な変光を示す天体として昔から注目されていましたが、このような姿をしているとは驚きでした」と語るのは共同研究者の田村元秀教授(東京大学/自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター)です。「すばる、ALMA、VLAという多波長でのシャープな観測と最新の理論研究が連携することで、生まれたばかりの星で起こった珍しい飛来現象を見事に捉えることができました」

詳細は、米国国立電波天文台 (NRAO) のプレスリリース記事 (英語) をご参照ください。

本研究成果は、Nature Astronomy (2022年1月13日付) に掲載されました(Ruobing Dong et al. "A likely flyby of binary protostar Z CMa caught in action")。

 

すばる望遠鏡について
すばる望遠鏡は自然科学研究機構国立天文台が運用する大型光学赤外線望遠鏡で、文部科学省・大規模学術フロンティア促進事業の支援を受けています。すばる望遠鏡が設置されているマウナケアは、貴重な自然環境であるとともにハワイの文化・歴史において大切な場所であり、私たちはマウナケアから宇宙を探究する機会を得られていることに深く感謝します。

(関連するリリース)

ハワイ観測所:惑星誕生のゆりかごを揺らす飛来天体

NRAO(英語): ALMA Catches “Intruder” Redhanded in Rarely Detected Stellar Flyby Event