ガス惑星の磁場分布のイメージ図  ©アストロバイオロジーセンター

概要

アストロバイオロジーセンターの堀 安範 特任助教の研究によって、太陽系外の短周期ガス惑星は地球や木星よりも強力な数10-数100G(ガウス)の磁場を持ち、磁場生成とその強さは中心核(コア)の存在と密接に関係していることが明らかになりました。近い将来、ガス惑星からの電波放射を検出することで、惑星磁場の情報を介して、謎に包まれた太陽系外のガス惑星の内部を探れる可能性を示唆しています。本研究成果は、2021年 2月16日発行の米国の科学雑誌アストロフィジカル・ジャーナルに掲載されました。

研究背景

惑星内部の導電性流体の運動で生じる電流を介して、惑星磁場は生成・維持されると考えられています。これはダイナモ理論と呼ばれ、太陽系では水星、地球、木星、土星、天王星そして海王星(木星の第3衛星であるガニメデにも固有磁場の存在が示唆されています)がダイナモ駆動の固有磁場を有しています*1。地球内部では外核の鉄・ニッケル合金、ガス惑星では金属水素*2層、氷惑星ではイオン水*3領域が磁場生成の役割を担っています。このように、惑星磁場の有無や強さは惑星内部の熱的および物理状態と密接に関連しています。
太陽系外惑星の磁場検出に向けた観測的試みもなされています。2020年、電波望遠鏡 LOFAR*4を用いた、うしかい座タウ星の円偏光観測によって、短周期ガス惑星 (うしかい座タウ星b)*5からの電波放射の兆候をとらえたという報告がなされました (Turner et al. 2020)。また、短周期ガス惑星(ホット・ジュピター)を持つ4つの恒星 (HD 179949, HD 189733,うしかい座タウ星, アンドロメダ座ウプシロン星) の表面活動の時間変動がホットジュピターの公転運動と同期していたことから、太陽系外のガス惑星の磁場の存在を間接的検出に成功したとされています (Cauley et al. 2019)。これらの観測から、短周期ガス惑星は木星よりも強力な 数10Gから数100G (ガウス) 程度の磁場を持つ可能性が示唆されています。
探査機で直接、その場計測を実施できない太陽系外惑星では、地上および宇宙望遠鏡の観測で得られる情報(質量、半径、上層大気の組成、大気流失の様子)は限定的です。しかし、強力な固有磁場を有する可能性が高い、短周期ガス惑星からの電波放射*6は、将来の電波望遠鏡 (例. SKA:Square Kilometre Array)による検出が期待されています。そのため、今後はより多くの太陽系外惑星の磁場の情報が得られると予想されています。


*1 木星の磁場は 約7.766G(ガウス)、地球の最大表面磁場 (南極域)は約0.66G。
*2 木星や土星のような水素・ヘリウム主体のガス惑星内部では、温度 2000K, 圧力100GPa以上の超高圧かつ高温環境下で圧力電離した水素が金属的性質を示す。
*3 通常、水蒸気や氷、液体の水の3つ状態のH2Oは、圧力・温度によって、高圧氷、超臨界水、超イオン水、イオン水、プラズマ状態とさまざまな相に状態変化する。
*4  LOFAR (LOw Frequency ARray)はオランダ電波天文学研究所によって運営される電波望遠鏡
*5  連星系のうしかい座タウ星のひとつ (うしかい座タウ星A)に、約3日の公転周期、約6倍の木星質量を持つ短周期ガス惑星が発見された。
*6  惑星からの主な電波放射機構には、シンクロトロン放射とサイクロトロン放射の2つが挙げられる。前者は惑星磁場中の電子の加速度運動で生じる非熱的な電波放射。後者はオーロラ電波放射とも呼ばれ、惑星の磁場に沿って運動する電子からの電波放射 (= 電子サイクロトロン不安定) で、電子の進行方向に集中する性質がある。将来の電波望遠鏡では、後者のオーロラ電波放射の検出が期待されている。

研究成果

本研究では、太陽系外惑星からの電波検出を見据えて、惑星磁場の情報から、謎に包まれる太陽系外惑星の内部を探る手法を検討しました。今回、中心星近傍に存在する短周期ガス惑星に注目しました。短周期ガス惑星の形成後から100億年間にわたる熱史のなかで、惑星内部の磁場生成と磁場強度の変化について調べました。その結果、木星の約50%以上の質量を持つ短周期ガス惑星(ホット・ジュピター:hot Jupiter)では、惑星磁場の発生と強度は惑星の内部構造(例えば、中心核の大きさ)にあまり影響受けず、数10-数100G以上の強力な磁場を保有する可能性が高いことがわかりました(図1を参照)。期待される惑星の磁場強度の観点から、こうした短周期ガス惑星が将来の電波放射観測の有力な候補天体になります。
一方、土星質量(木星質量の約30%)以下の短周期ガス惑星(ホット・サターン:hot Saturn)では、中心核(コア)が小さすぎると、誕生から数1000万年 (最大で数億年) にかけて、磁場が生成されないことがわかりました(図1の右図)。すなわち、土星質量以下の短周期ガス惑星の磁場の有無は惑星内部のコアの存在の手がかりとなります。しかし、弱い磁場強度の関係上、ホット・サターンからの電波放射は地球の電離圏に存在するプラズマによって遮蔽される可能性が高く、地上からの電波観測による検出は困難かもしれません。
以上から、観測的に示唆される通り、ホット・ジュピターでは太陽系の地球や木星と比べて、強い磁場を長時間維持されている可能性が高いことがわかりました。強力な固有磁場を保有すると理論的に予想される太陽系外の短周期ガス惑星では、中心星からの激しい高エネルギー粒子 (主に、恒星風やコロナ質量放出に伴う電子)の照射 にも晒されることから、地球や木星、土星で観測されているよりも遥かに激しいオーロラ現象が生じているかもしれません。

図1. 短周期ガス惑星で期待される磁場強度の時間変化 (Hori, 2021)

論文情報

掲載誌:The Astrophysical Journal
論文タイトル:The Linkage between the Core Mass and the Magnetic Field of an Extrasolar Giant Planet from Future Radio Observations
DOI:https://doi.org/10.3847/1538-4357/abd8d1
著者: 堀  安範  (アストロバイオロジーセンター/国立天文台)