超高温・超短周期の海王星型惑星LTT 9779 bの想像図(Image: © Ricardo Ramirez/University of Chile)

発表のポイント:

  • 公転周期が19時間しかない超高温・超短周期の海王星型惑星LTT 9779 bを発見した
  • LTT 9779 bは、これまで海王星型惑星が発見されていなかった「海王星砂漠」と呼ばれる超短周期の軌道で発見された
  • この惑星は、超高温となった海王星型惑星の大気を調べる絶好の観測ターゲットとなる

アブストラクト:

アストロバイオロジーセンター・東京大学大学院の成田憲保教授、アストロバイオロジーセンター・東京大学大学院の田村元秀教授らの参加する国際研究チームは、NASAが打ち上げたトランジット惑星探索衛星TESSと地上望遠鏡の連携した観測により、公転周期が19時間しかなく、惑星の温度が摂氏1,700度を超えると見込まれる超高温・超短周期の海王星型惑星LTT 9779 bを発見しました。
LTT 9779 bは、半径は地球の約4.7倍、質量は地球の約29倍で、海王星をやや大きくしたような系外惑星です。2020年までに4,000個を超える系外惑星が発見されてきましたが、これまで公転周期が1日未満の海王星型惑星が発見されたことはなく、そのような超短周期の軌道は「海王星砂漠」とも呼ばれていました。今回発見されたLTT 9779 bは、海王星砂漠で初めて発見された海王星型惑星です。LTT 9779 bは、超高温となった海王星型惑星がどのような性質の大気を持つのか、また、どのように生まれたのかを詳しく調べる絶好の観測ターゲットになります。
本研究成果は2020年9月21日(英国夏時間)、国際科学雑誌「Nature Astronomy」にオンライン掲載されます。

発表内容:

現在までに、太陽以外の恒星を公転する系外惑星が4,000個以上発見されています。系外惑星の軌道はとても多様であることがわかってきており、公転周期が1日未満という超短周期の軌道にも惑星が発見されています。しかし、そのような超短周期の軌道には地球サイズの惑星と木星サイズの惑星は発見されていましたが、海王星サイズの惑星はこれまで発見されていませんでした。そのため、この超短周期の軌道は「海王星砂漠」とも呼ばれていました。

そのような状況のもと、NASAは惑星が主星の前を通過する「トランジット」(注1)という現象を使ってほぼ全天で系外惑星を探すトランジット惑星探索衛星TESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite:注2)を、2018年4月に打ち上げました。TESSは4台の超広視野カメラで一度に24度×96度の領域(セクターと呼ばれる)を観測します。TESSは各セクターを27.4日ずつ観測し、約2年をかけて計26セクターで空のほぼ全ての領域を順次観測して、あらゆる方向のトランジット惑星を探査しています。

LTT 9779 bは、TESSのセクター2の観測で新しいトランジット惑星候補として発見されました。ここでトランジット惑星候補と言っているのは、TESSで発見されたのが惑星ではなく、恒星同士が周期的に食を起こす食連星という天体である可能性があるためです。そのため、TESSで発見されたトランジット惑星候補は、地上望遠鏡などによる追加の観測によって本物の惑星かどうかを検証する必要があります。そこで本研究チームは、世界各地の望遠鏡で追加の観測を行い、特に日本のチームは、南アフリカにあるIRSF(InfraRed Survey Facility)1.4m望遠鏡(注3)でこの追加の観測を行いました。その結果、LTT 9779 bが本物の惑星であり、半径は地球の約4.7倍、質量は地球の約29倍で、海王星をやや大きくしたような系外惑星であることを突き止めました。惑星の密度から、この惑星は地球の2~3倍程度の質量に相当する水素を主成分とした大気を持つと推定されています。

LTT 9779 bは、太陽からおよそ260光年離れたところにある、年齢約20億歳の恒星LTT 9779のまわりのすぐそば(0.017天文単位、水星軌道の約1/23)を、わずか約19時間で公転しています。LTT 9779は表面温度が摂氏5200度(太陽より300度ほど温度が低い)で、そのすぐそばを公転しているLTT 9779 bの表面温度は摂氏1,700度を超えると見込まれています。私たちの太陽系の海王星は公転周期が約165年で、表面温度は摂氏マイナス200度以下ですが、その極低温の世界とは真逆の「極高温の海王星」です。

これまでに発見された系外惑星では、公転周期1日未満の軌道にも、地球の半径の2倍程度より小さな惑星や木星(地球の約11倍の半径)くらいの巨大な惑星は発見されていました。しかし、海王星(地球の約4倍の半径)くらいの中間の大きさの惑星は発見されていませんでした。LTT 9779 bはこの「海王星砂漠」と呼ばれる中間の領域で発見されました(図1参照)。

図1:今回発見されたLTT 9779 bの質量・半径を、これまでに発見された系外惑星の質量・半径と一緒にプロットした図。LTT 9779 bがこれまでに惑星が発見されていなかった領域にあることがわかる。薄青の丸はトランジットを使って発見された惑星で、黄色の丸は「視線速度」と呼ばれる惑星が主星の周りを公転していることによって生じる主星の速度変化を観測する方法で発見された惑星。(Nature Astronomy誌掲載論文の図を一部日本語に改変して引用)

従来の観測結果は、理論的には以下のように説明されてきました。すなわち、公転周期1日未満の超短周期の軌道では、水素を主成分とした惑星大気が惑星の重力の束縛を抜け出して主星に流れ込んでしまうことと、恒星からの強烈なX線や紫外線によって水素の大気が吹き飛ばされてしまうことが予想されています。このため、十分に重力が強く大量の水素の大気を保持できる木星型惑星か、水素の大気を全て失ってしまった地球型惑星しかこのような超短周期の軌道には存在できないというものです。

しかし、今回のLTT 9779 bの発見は、この従来の理論と矛盾するものです。ひとつの考えられる可能性は、LTT 9779 bは恒星が誕生してすぐにこの軌道にやってきたのではなく、他の惑星に弾き飛ばされるなどして比較的最近この軌道に移動してきた惑星であり、今後、水素の大気を失って地球型惑星へと進化していく過程にあるというものです。

この仮説を観測によって検証するためには、これからLTT 9779 bの軌道や大気を詳しく調べて、この惑星が外から弾き飛ばされてきた証拠があるかどうかや、水素大気が惑星から散逸しているかどうかを調べる必要があります。LTT 9779 bは太陽系の近くにある明るい恒星を公転しているため、さらなる追観測の研究に適していると言えます。また、LTT 9779 bは超高温となった海王星型惑星の大気がどのような性質を持つのかを調べる絶好の実験場となるでしょう。

謝辞:

本研究は、以下の支援を受けています。
科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 さきがけ 研究領域「計測技術と高度情報処理の融合によるインテリジェント計測・解析手法の開発と応用」における研究課題「多色同時撮像観測と高精度解析による第二の地球たちの探査」(研究者:成田 憲保、課題番号:JPMJPR1775)科研費新学術領域「新しい星形成論によるパラダイムシフト:銀河系におけるハビタブル惑星系の開拓史解明」・計画研究「赤外線による若い惑星とハビタブル惑星の観測の新機軸」(研究代表者:田村元秀)

共同発表:
東京大学リリース
科学技術研究機構リリース

論文情報:
雑誌名:Nature Astronomy
論文タイトル: “An Ultra Hot Neptune in the Neptune Desert”
著者:James Jenkins et al. including Norio Narita, Motohide Tamura
DOI番号:10.1038/s41550-020-1142-z
アブストラクトURL:https://www.nature.com/articles/s41550-020-1142-z

<用語解説>

注1:トランジット
恒星の前を惑星が通過する、いわゆる「食」の現象のこと。太陽系外惑星の軌道がたまたま主星の前を通過するような軌道の時に起こる。トランジットをする惑星を「トランジット惑星」と呼ぶ。

注2:トランジット惑星探索衛星TESS
マサチューセッツ工科大学が中心となって進めているNASAの衛星計画。2018年4月18日に打ち上げられ、2年間でほぼ全天のトランジット惑星を探索するという計画を実施してきた。2年間の観測で2,000個以上のトランジット惑星候補を発見している。現在は延長計画が認められ、3年目の観測が行われている。

注3:IRSF(InfraRed Survey Facility)1.4m望遠鏡
名古屋大学が南アフリカ共和国にある南アフリカ天文台サザーランド観測所に設置した1.4mの赤外線望遠鏡。赤外線の3つの波長帯(色)で同時に観測できる多色同時撮像カメラSIRIUSを搭載している。